在庫は豊富なのに…トイレットペーパー、売り切れ続く訳（西日本新聞） - Yahoo!ニュース

　新型コロナウイルスに関するデマの影響で、各地のスーパーなどでトイレットペーパーが売り切れる状態が改善されない。メーカーでは在庫も豊富なのに、なぜ購入できない人がいるのか。流通ルートを探ると、急に運送量を増やせない事情が浮かんできた。

【写真】「在庫が潤沢にございますので、ご安心ください！」と呼び掛ける丸富製紙のツイッター

　「在庫は十分あります」。西日本エリアにトイレットペーパーを出荷している大分製紙（大分市）の担当者は力を込める。

　同社は常時、北九州市内の倉庫に通常の出荷量の約1カ月分（12ロール入りパックで約480万個）の在庫がある。「マスクの材料に紙が回されて不足する」などのデマや、在宅時間が増える小中高校の臨時休校を受けて、段階的に出荷量も増やしている。

　なぜ店舗への供給が追いつかないのか。運送業者は慢性的な人手不足が続き、在庫はあっても配送するドライバーを急には増やせないという。担当者は「トイレットペーパーはかさばり、トラック1台の運搬量には限りがある。一つの店舗からの注文量が増えると、その分、配送できる店舗数は減る」と明かす。

　販売側も事情は同じだ。マックスバリュ九州（福岡市）はメーカーから届くトイレットペーパーを週3回、各店舗に届ける。ただ、配送量は急に増やせない上、各店舗に保管場所もないため、供給が追いつかない。ホームセンターのグッデイ（同市）も通常通り納品されるが、店頭に並んだ途端に売り切れる。開店を待つ列ができ、毎日買いに来る人もいるという。

　客の中には「デマと分かっていても自宅の残りが少ないから、店を回って買い求めている」（同市の40代女性）という切実な声もある。関西大の亀井克之教授（リスクマネジメント論）は「在庫はあると分かっていても、店舗での売り切れを実際に見ると不安になり、買い占めるという心理につながる」と指摘する。

　全国にトイレットペーパーを出荷する丸富製紙（静岡県富士市）は、製品が積み上がった倉庫の写真に「ご安心ください！」と添えて会員制交流サイト（SNS）に投稿した。約1カ月分の在庫はあるうえ、2月下旬から通常の約2倍のペースで出荷している。担当者は「消費者の元に届かないのは心苦しいが、店頭でも徐々に増えるはず」。

　亀井教授は「公的機関やマスコミが売り切れの仕組みと同時に、『在庫は十分ある』というメッセージを打ち出すことが重要。消費者は自宅にある量を考え、今買うべきかどうか賢く判断してほしい」と話した。（四宮淳平、石田剛、仲山美葵）

西日本新聞社

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March 07, 2020 at 08:36PM
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