
欧州連合(EU)の欧州委員会は20日、ロシアからの天然ガス供給の途絶や大幅減少に備えた緊急計画案を公表した。減少分を補うため他地域からの調達や再生可能エネルギーの導入を強化するが、それだけでは足りず、加盟国に15%の消費削減を要請するなど需要減にも取り組む。需要期の冬を前に欧州の危機感が高まっている。
西側諸国と対立を深めるロシアは欧州へのガス供給を絞り込んでいる。欧州委によると、6月時点で過去5年間の平均に比べて、ロシアからEUへのガスの流量は3割以下に低下している。
欧州では、ロシア北西部からドイツをつなぐガスパイプライン「ノルドストリーム」を通じた供給再開が予定される21日以降も供給量が以前の水準に戻らなかったり、供給停止になったりする事態が懸念される。ロシア国営ガスプロムが供給契約を結ぶ複数の欧州企業に「不可抗力」で供給を保証できないと通告したとの報道もある。
EUのフォンデアライエン欧州委員長は20日の記者会見で「ロシアがガスを兵器として使っている」と批判した。今後の一段の供給減を想定し「EUとしてエネルギー安全保障に取り組む必要がある」と力説した。
欧州委は8月から2023年3月まで加盟国による天然ガス消費量を過去5年間の平均と比べて15%減らすよう提案した。当初は自主的な取り組みとするが、供給状態がさらに悪化するなどすれば強制措置に切り替える構えだ。実現すれば450億立方メートルの節約になる。
需要減のために企業がガス消費を減らすインセンティブを設ける。ガス消費を減らした分をオークションで売却できる仕組みや、企業がガスから他の燃料に転換するための補助金制度を検討する。
加盟国に再生エネ・原子力の利用拡大を促す一方、石炭消費の一時的な増加も容認する方向だ。公共の建物に暖房や冷房の設定温度の基準も設ける。
ガスが十分に得られない際に備えて、経済・社会への影響を最小限に抑えるための計画づくりを加盟国に求める。健康など重要分野への優先供給などを念頭に置いている。欧州委の提案は、26日のEUエネルギー相理事会で加盟国が討議する。

EUは21年にロシアから全体の4割にあたる1550億立方メートルの天然ガスを輸入した。供給減に備え、EUは代替調達を急いでいる。米国とは3月に22年に150億立方メートルの追加供給を受けることで合意。18日にはアゼルバイジャンから40億立方メートル分を追加で得るメドを立てた。
ナイジェリアなどアフリカや中東諸国とも協議しているが、次の冬までにすべてを代替調達だけではまかなえない。EUは需要側の取り組みが欠かせないと判断した。

ガス業界団体GIEによると、貯蔵能力に対する足元の欧州の在庫率は64%。EUは冬前に80%に引き上げる計画だが、足元の猛暑の影響もあってエネルギーの確保は進んでいない。100%でEUの年間消費量の2割強に相当する。
とりわけ中・東欧の在庫率は低く、国際通貨基金(IMF)は19日、ハンガリーやスロバキアなどは国内総生産(GDP)が最大で6%落ち込むリスクがあると警告した。
EUは対ロ制裁として石炭と石油の輸入を停止することで合意済みだ。ミシェル大統領は「次はガス」と語るが、ガスは最もロシアへの依存度が高い。制裁が実現すればロシア経済に大きな打撃を与えられる一方、自らの経済への影響も大きい。
「EU内でガス不足による犠牲者が出ては元も子もない」(EU高官)との考えは広がりつつある。ガス制裁の論議は次の冬を乗り越えた来年以降に先送りされる可能性がある。
(竹内康雄)
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